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<< 9月8日発売 Fragment 「condense E.P.」 | main | from kyoto >>
狐の王子
視界は黄色く、濁りの少ない瞳の中で私は柵の向こう側に羊一匹見つけた。
その柵は私の身長の三倍はあった。向こう側には行けないと思った。
隙間から声を漏らそうとして羊に呼びかける。

「おい、君はそこで独りでつまらなくないのかい?」
「外から声が聞こえる。僕は初めて君を見たよ。」

羊は嬉しそうに喋った。
「君はいったい誰なんだい?」

「私は狐の王子さ。」

「おう、どこかの国の偉い方なんですね。」

「いや、私は国など持っていませんよ。ずっと孤独でしたよ。」

私は寂しそうに手を擦る。柵の外は風が強く寒いからだ。
羊は言った。

「そうですか、僕のこの場所には仲間が居ます。家も在ります。
でも僕も孤独を感じてしまうのです。」

「私は王子だけども、家族や友達を知りません。しかし、私には外にいるという自由を頂きました。」

「きっと神は孤独な人なのでしょう。僕達が孤独を感じなかったら、きっと寂しがったと思います。」

とても分厚い壁の様に思える柵の向こうでは暖かい匂いがした。
仲間達の歌が聞こえる。ただそれをじっと聞いている。

「幸せの見つけ方など簡単なのかもしれません。私は君の仲間達の
歌で心がとても暖かい。」

羊が言う
「僕はあなたの心が見えたようで、幸せな気持ちだ。」

しかし、また同じ様に何度も何度も繰り返して行くのでしょう。

狐の王子が言う
「本当は私にも家が欲しかった。家族が欲しかった。だけど、この柵は叶わない夢だとそう言われている気もする。だけど、私はこうやって歩いて五感を感じて君と出会っている。」

羊は言う
「僕も嬉しいよ。いつか、森を歩きたいという夢が在る。けど、この柵はそうはさせてくれない。だけど、君の目や声やそれを感じる事ができた。それは森を駆け抜けた君の心だ。」


「そろそろ私は行きます。この命が果てるまで。」

「ありがとう。僕も死ぬまで誰かのことを思い続けます。そして皆でうたいます。」


背中と足音、小さくなるまで日が暮れず、ただ、仲間達の歌声が
永遠に空を駆け抜けている。
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