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"4年間分の思いを" Paranel Album「旅人たちのホテル」
 

もう4年間もなるんですね。制作期間。このアルバムはずっと大切にしてきた
僕の人生分の言葉が詰まったアルバムです。完成です。
リリースはもうしばらく御待ち下さいね!
やっと自分の中で区切りが出来たようなそんな想いです。






「旅人たちのホテル」


「ねえ、あの星はいつまで輝いているの?」
幼い頃、父が話してくれる星の話がとても好きだった。
私の少年時代は好奇心が旺盛で友人も恋も人並みに経験してきた。
14才の頃、学校で将来についてを真剣に考える機会が訪れた。
私は憧れていたスティーヴン・ウィリアム・ホーキングの影響もあり
天文学者を目標としていた。
「あなたたちの夢をノートに書いて下さい。きっと叶いますから。」
担任の教師がそう言ってくれた。
私は迷わず、星が散らばる銀河の絵をノートに描いた。
先生が私のノートを見てこう言った。
「君は画家になりたいんだね。とても素敵な絵だよ。」

高校に入り、私は美術部を希望した。
父に誕生日に買ってもらった望遠鏡で天体観測を今でも続けている。
学者に憧れながらも星を描く事が好きだった。
17才の夏、彼女ができた。その彼女には星の名前ムリフェインから
引用された素敵な名前を持っている。
「ねえ、あの星はいつまで輝いているの?」
彼女と週に一度の天体観測をいつも楽しみにしている。
12月のとある夜、彼女はある病を抱える。
私は週に一度、彼女との面会がとても辛くなっていた。
病室に安物の望遠鏡を持ち込んだ。彼女との最後の天体観測だ。
隣の病室の子供が遊びに来た。
「ねえ、あの星はいつまで輝いているの?」
子供は無邪気に笑いながらあの星を指さした。

私は美大に進み、絵を描き続けた。
亡くなった彼女との思い出を大切にしたかったからだ。
あのとき以来、私は星を見ていない。
ドローイングの講師が私をとても評価してくれた。
「なあ、君の描く夜空はほんとに素敵だよ。この一番強く光る星はなんて星なんだい?」
隣の研究生が私の絵を見てこう言った。
「ねえ、この星はいつまで輝いているの?」

私はデザイン事務所に就職することになる。
星も好きだ。絵も好きだ。しかし、それを仕事にするほど、覚悟が決まらなかったからだ。
一人暮らしを始め、初めての土地、恵まれた同僚たち、尊敬できる上司。私は何不自由無く
新しいスタートを始めた。
「こいつさ、星の絵を描くのが好きなんだよ。」
ある打ち上げで上司が皆に言った。
馬鹿にされたわけではないけど、少しだけ居心地悪く、酒を啜った。
普通の人生とはなんだろうか。
こうしてあっという間に年を取り、沢山の人間と出会い、別れ、悲しい事も
沢山の思い出も、ただ、私の言葉の中だけに存在する。
「ねえ、あの星はいつまで輝いているの?」
私は自分の部屋の窓から指を指し、ただ泣いていた。

私は年をとった。いつのまにか妻も息子もできて
人並みの幸せというものを噛み締めていた。
ある日、妻が倉庫小屋の整理を始めた時に望遠鏡が出て来た。
「あなたの子供の頃から使ってた望遠鏡よね?」
その日の夜、何十年ぶりになるだろうか。皆で望遠鏡を覗いた。
「お父さん、あの星はなんていうの?」
「あの星は北極星というんだよ。あの星はな、絶対にあの場所にあるから
昔の人は道標にしていたんだよ。すごい星だよな。」
「まるでお父さんみたいな星だね。」
「そうか、ありがとうな。」
「ねえ、あの星、ずっと輝くと良いね。」

私は定年退職をし、癌を患ってしまった。
息子も大きくなり、立派に成長していった。
妻もよく私を支えてくれた。
結婚記念日に妻の好きな星の絵をプレゼントすることが
私の生き甲斐だった。
「ねえ、あなた、私はあなたに出会えて本当に嬉しいの。
あなたは私の道標のようなもの。あなたは一度も道に迷った事がないわ。」

私は愛されている。私の人生を語れる人物がこの世に誰もいないけど
私という人間がいた。妻の部屋に飾られた私の絵画。
息子に贈った腕時計。私たち家族の写真。

「ねえ、あなた。あなたが今持っている夢、どうぞ叶えてください。」
妻が私を抱き締めて泣いている。

「私はあの星がとても奇麗に見える場所へ行きたい。」







絵・作 : Paranel







LHW-046
「旅人たちのホテル」

01 旅人たちのホテル
02 Timemachine
03 赤い翼
04 焦燥
05 Forbidden
06 革命家たちの朝食
07 Eureka
08 Right side
09 Dry envy
10 BROKEN
11 藍色Film
12 蛇の心臓
13 Underworld77
14 Final down
15 Parallel Poem

















































狐の王子
視界は黄色く、濁りの少ない瞳の中で私は柵の向こう側に羊一匹見つけた。
その柵は私の身長の三倍はあった。向こう側には行けないと思った。
隙間から声を漏らそうとして羊に呼びかける。

「おい、君はそこで独りでつまらなくないのかい?」
「外から声が聞こえる。僕は初めて君を見たよ。」

羊は嬉しそうに喋った。
「君はいったい誰なんだい?」

「私は狐の王子さ。」

「おう、どこかの国の偉い方なんですね。」

「いや、私は国など持っていませんよ。ずっと孤独でしたよ。」

私は寂しそうに手を擦る。柵の外は風が強く寒いからだ。
羊は言った。

「そうですか、僕のこの場所には仲間が居ます。家も在ります。
でも僕も孤独を感じてしまうのです。」

「私は王子だけども、家族や友達を知りません。しかし、私には外にいるという自由を頂きました。」

「きっと神は孤独な人なのでしょう。僕達が孤独を感じなかったら、きっと寂しがったと思います。」

とても分厚い壁の様に思える柵の向こうでは暖かい匂いがした。
仲間達の歌が聞こえる。ただそれをじっと聞いている。

「幸せの見つけ方など簡単なのかもしれません。私は君の仲間達の
歌で心がとても暖かい。」

羊が言う
「僕はあなたの心が見えたようで、幸せな気持ちだ。」

しかし、また同じ様に何度も何度も繰り返して行くのでしょう。

狐の王子が言う
「本当は私にも家が欲しかった。家族が欲しかった。だけど、この柵は叶わない夢だとそう言われている気もする。だけど、私はこうやって歩いて五感を感じて君と出会っている。」

羊は言う
「僕も嬉しいよ。いつか、森を歩きたいという夢が在る。けど、この柵はそうはさせてくれない。だけど、君の目や声やそれを感じる事ができた。それは森を駆け抜けた君の心だ。」


「そろそろ私は行きます。この命が果てるまで。」

「ありがとう。僕も死ぬまで誰かのことを思い続けます。そして皆でうたいます。」


背中と足音、小さくなるまで日が暮れず、ただ、仲間達の歌声が
永遠に空を駆け抜けている。